ドカベン名勝負(高2夏その3)
ドカベン名勝負。
高2夏の甲子園。
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ブルートレイン学園
夏の甲子園、初戦。
初日の第3試合で、明訓はブルートレイン学園(以下、「BT学園」)と対戦した。
山田のホームランで初回に2点を先制した明訓。
その後は攻め倦むが、6回、またもや山田が打つ。
タイムリー三塁打。
3対0。
なかなか点は入らないものの、明訓の勝利が揺らぐ気配はない。
しかし、6回裏、BT学園は正体を現す。
夕方になり、甲子園球場が暗くなるにつれ、その暗闇を利用して足で撹乱したのだ。
それまで、BT学園は、ダラダラと時間稼ぎをしていた。
実はそれは、この暗闇が来るまで引き延ばしていたのだ。
暗闇と、足。
野球そのものでは明訓に及ばないBT学園だが、この6回裏に逆転。
照明がついた。
さあ、明訓が逆転かと思われたが、そうはいかなかった。
BT学園は、さらなる準備をしていたのだ。
エース隼は、スローカーブを照明に重なるように投げ、消えるボールにするという芸術的なピッチングを披露した。
さらに8回裏、明訓はミスで1点を失い、BT学園のリードは2点に。
そして、9回表。
微笑、石毛が凡退して、2アウトランナーなし。
絶体絶命。
ここまでかと思われたが、硬くなったBT学園がミスを連発。
なんと明訓は、逆転に成功したのだ。
6対5。
あと一歩まで明訓を追い詰めたBT学園の作戦は見事だった。
弁慶
弁慶高校との試合について書くのは、気が重い。
簡単に書いてしまっていいものだろうかと、躊躇する。
山田らが在籍した3年間で、唯一黒星を喫した試合だ。
改めて読み返してみても、相手は弁慶高校というよりは、武蔵坊と義経の2人だ。
試合前、エース義経はTVのインタビューに、初球ストレートの予告をする。
それに対し明訓は、「1番山田」という奇策に出る。
果たして、義経は予告通り初球ストレートを投げ、山田はそれをホームランする。
ところが試合が進むにつれ、この一連の事態は、明訓が弁慶の策にはまったものだということが判明する。
山田は、鈍足だ。
だから、山田がランナーだった場合、チャンスを潰してしまう。
弁慶は、ソロホームランの1点と引き換えに、明訓に試合を作らせないという作戦をとったわけである。
7回裏、弁慶の攻撃。
里中・山田のバッテリーは、監督土井垣の指示で武蔵坊を敬遠することにした。
ところが、武蔵坊は敬遠のボールを2ランホームラン。
逆転。
しかし、山田太郎という人物は偉大だ。
9回に打席が回ってきたうえに、同点ホームランを放つ。
試合は2対2。
そして、あの9回裏を迎える。
2番牛若、サードフライ。
3番義経、3塁線を破るヒット。微笑の好守備で、シングル止まり。
そして4番武蔵坊。
ホームラン級の当たりだったが、殿馬のジャンプにより、これもシングル。
さすが明訓だ。
他のチームなら、この2人でとっくに決着がついているところだろう。
先に書いたように、相手は義経と武蔵坊だけである。
明訓はこの回を守り切ったかに思えた。
5番、安宅。
5番以下が里中を打てないことは、明訓、弁慶ともに承知済み。
つまり、義経の足でかき回すしかない。
明訓は、警戒する。
ところが、武蔵坊は、明訓の警戒を逆手にとる。
安宅にストレートを狙わせたのだ。
安宅は、センター返し。
セカンド殿馬がダイビングキャッチ。
ショートの石毛にトス。
2アウト。
またもや、さすが明訓。
石毛がファーストに送ればゲッツーでチェンジだ。
ところがここで、ドカベン史上に残るプレイが出る。
一塁ランナーの武蔵坊は、石毛の送球を顔面で受け、ダブルプレイを阻止。
跳ね返ったボールは殿馬へ。
本塁を狙う義経を指すべく、バックホーム。
タッチに行く、キャッチャー山田。
タイミングはアウトだった義経は、なんと八艘飛びで山田を躱す。
サヨナラ。
明訓は、命をかけた武蔵坊と、野球の発想を超えた義経に敗れた。
紛れもない名勝負だった。
▼いしざわのnote