犬飼小次郎のキャッチボール投法には、いったい何の意味があったのだろうか。
犬飼小次郎のキャッチボール投法について考えている。
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キャッチボール投法
犬飼擁する土佐丸高校は、準々決勝まですべて1点差の打撃戦を勝ち抜いてきた。
犬飼は、まるでキャッチボールのような緩いピッチング。
「鳴門の牙」という異名を持つとされる犬飼だったが、光る才能は打撃でしか見せなかったのだ。
準決勝の相手はドカベン山田のいる明訓。
序盤、犬飼小次郎は、相変わらずキャッチボール投法。
山田のタイムリーで、明訓に2点を与えてしまう。
鳴門の牙
四回、山田の2打席目。
ついに犬飼がベールを脱ぐ。
剛球。
山田太郎から三振を奪う。
その後はキャッチボール投法を封印し、明訓打線を封じる。
六回、里中に対して再びキャッチボール投法に戻したことがきっかけで1点を追加されるも、剛球はまったく打たれない。
間違いなく、大会No. 1投手だった。
試合は、延長の末、山田のサヨナラホームランで明訓の勝ち(5−4)。
殺人野球とキャッチボール投法
子どもの頃にはまったく疑問に思わなかったのだが、先日読んで、「キャッチボール投法とは何だったのか」が気になっている。
準々決勝までは、全て1点差で勝ち切ったことから、土佐丸と相手チームには相当の実力差があったと推測できる。
問題は、明訓戦だ。
なぜわざわざ初回の2点と六回の1点を与えたのか。
準々決勝までの相手と同様、楽勝だと思ったのだろうか。
偶然明訓と同じ宿舎だった土佐丸は、明訓の試合をテレビ観戦している。
緒戦の通天閣高校戦では、犬飼小次郎すらも山田の打席を見ている。
実力は、わかっていたはずなのだ。
にもかかわらず、一〜三回と六回の里中の打席にキャッチボール投法で臨んだ犬飼小次郎。
それらの失点がなければ、3−0で勝利していたかもしれないのに。
犬飼小次郎の弟、武蔵(たけぞう)の心の声に、ヒントがある。
武蔵は、なぜか試合に遅れて到着し、最初スタンドで観戦していた。
初回の小次郎のキャッチボール投法を見た武蔵は、拳を握りしめて、こう思う。
あんちゃん
なにやってんや
この野球は………
なるほど、武蔵は兄に「鳴門の牙」のピッチングをしてほしかったのだろう。
となると、ますますキャッチボール投法で負けた意味がわからない。
ところが。
六回表の攻撃から、武蔵が試合に出た。
裏の守備につき、小次郎が剛球で北を三振にとったとき、彼はこう思うのだ。
あんちゃん
そうきばらんでもいいのに……
打たせりゃいいのによォこれじゃなんにもできないじゃないか
この試合、土佐丸は殺人野球(つまりはラフ・プレイ)を繰り返していた。
打球が飛んできたりランナーが塁に出たりしなければ、殴ることも蹴ることもできない。
だから、打たせればいいのに、と思ったのだ。
犬飼武蔵という人物は、その場その場の感情に素直な性格なのだろう。
見ている側にいるときにはイライラしていたが、自分が出たら、今度は剛球では退屈になる。
すると、北に続く里中に対し、兄の小次郎は再びキャッチボール投法。
それを見た武蔵は、声を出す。
ん?
あんちゃん
満面の笑みである。
おもちゃを与えられた子どものようだ。
キャッチボール投法を打ち返した里中の打球。
それをわざとトンネルした武蔵は、本塁を狙う里中の後頭部目がけて遠投する。
山田の指示でヘッドスライディングした里中。
直撃は免れたが、完全には避けることができずにボールは後頭部に当たる。
(滑っていなければもっと危ないことになっていたらしいが、滑って後頭部に当たったのなら、そのまま走っていれば背中にしか当たっていないのではないだろうか)
このプレイにより、明訓は3点目をとった。
明訓戦に関しては、選手を潰すためのキャッチボール投法だったということだろうか。
そこまでしないと勝てないと思ったということか。
ちなみに八回、武蔵のホームランで同点に追いつく。
これは、里中が頭部への攻撃(送球)を受けたことと無関係ではないかもしれない。
だんだんわからなくなる。
- 小次郎が初回から剛球
- 武蔵がスタメンでホームランを狙う
これでは、勝てなかったのだろうか。
不知火、坂田を攻略した明訓打線なので、もしかしたら小次郎の球も打ったのだろうか。
土佐丸高校は、謎である。
土佐丸高校戦は、単行本の15巻、16巻に収録されています。
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